COLUMN

【開催レポート】乙武洋匡と「ダイバーシティ」と「表現」について考える

株式会社FUSIONでは、さらなる組織の成長と、それに伴うキャリア構築支援の一環として、良質なインプットとアウトプットを促す勉強会を、定期的に開催しています。

外部の見識者をお招きし実施する勉強会は、社員と、社員が招待する外部からの参加者で実施しており、先日6月7日(火)に開催した勉強会では乙武洋匡さんをお招きいたしました。

メディアでのご出演も多く、日本のダイバーシティ分野における旗振り役とも言える乙武さんに、広告業界で働く我々が何を心がける必要があるのか、を伺いました。

この記事では、当日の乙武さんのお話の一部を抜粋しております。

執筆=村松愛衣・久山裕貴・井上陽花
株式会社FUSION 23卒内定者

意外性のあるところで活躍した方が本当の意味でのバリアフリーに繋がる

--まず最初に、乙武さんのキャリア選択にはどのような背景と意思があったのでしょうか?

大学を卒業して、その時点で日本で一番有名になってしまった障害者が障害者福祉の道に進んだら、ああやっぱりね、となってしまって面白くないなと僕は思ってたんですよね。

「障害があるのにそんな分野に進んだの」って意外性のあるところで活躍した方が本当の意味でのバリアフリーに繋がるのかなと思ったんです。

例えばスポーツライターに関して、当時25年くらい前はパラリンピックなんて日本人は誰も知らなかったので、障害者×スポーツは意外性があったんです。で、自分自身スポーツが好きだったのでスポーツに関わりたかった。僕はそうやってキャリア選択をしてきました。

誰も傷つけない表現はない

--広告やメディアに携わる私たちは、乙武さん視点でどのような意識を持って仕事に取り組むべきでしょうか?

1つは、誰かを傷つけてしまう可能性がある事を自覚すること、これがすごく大事かなと思っています。

つまり、誰も傷つけない表現って多分ないってことです。だってね、出産シーンをテレビで放映するって企画がプチ炎上したんですよ。子供を産めない方々に失礼じゃないかって言うんです。もう言いがかりでしかないなと思って。って考えたら誰も傷つけない表現ってないんですよ。

もう1つは、この商品・サービスが広く世の中に伝わることで本当に社会はよくなるのかという視点を絶対に無くさないでほしいということですね。

「いやこれ案件としては金額がデカくて喉から手が出るくらいほしいけど、これどうなん?」ってジレンマあるでしょ?そういう仕事はできたら断ってほしいな。

だって、誇れなくない?自分のスキルを活かしてこの商品を世の中に広く伝えたけど、その結果社会が悪化しました、みたいなことになった時、なんでこの仕事してるんだろうってならない?

だから、本当にみんながこれマジでいいよって思えるものに注力できるようになってほしいなあ。

自分の目指す社会を実現するための最後の手段として

--現在のそんな日本におけるダイバーシティへの意識やアクションについて、率直にどのように捉えていますか?

僕はこれまで仕事やプライベートを含めて海外を90ヵ国を回ってきましたが、マジョリティにとって、日本ほど住みやすい国はないです。でも、マイノリティにとって、日本ほど住みにくい国はないです。

つまりどういうことか。ダイバーシティへの意識やアクション、最悪だと思っています。

日本はどうしてもすぐに二択で考えさせるんですよ。賛成、反対とか、その二択の間に本当はいくつもの答えがあるのに、こっちなの?こっちなの?って煽るんです。そうじゃなくてもっといろんな選択肢あるよねって考えることが大事で、それがダイバーシティへの意識やアクションにつながっていけばいいなと思います。

メインのシステムを改革するのではなく、オプションを加えていく

--次のチャレンジとして、政治というステージを選んだ乙武さんは、具体的に何をやりたいのか、どういった社会を作りたいのかを教えてください。

今まで僕らマイノリティが日常生活で困っていた時、声を上げてきたのに全然世の中変わらなかった。車椅子ではお店には入れなかったり、地下にあるライブハウスに行けなかったりした。

今度、コロナでマジョリティが僕らと同じ困難に直面したら、どんどん世の中が変わっていったんですよ。デリバリーやテイクアウトが充実したし、好きなアーティストのライブがオンラインで見れるようになった。 嬉しかったけど、ちょっと悔しかった。

でね、僕はやっぱり今後コロナが収束すると、メインのシステムは元通りに戻ると思っています。 でも、このコロナ禍でできたオプションは残しておいてほしい。なぜなら、それがないと楽しめない人もいるから。

僕が政治を通じてやりたいのは、まさにそういうことなんです。選択肢を増やそうということ。

メインのシステムをひっくり返したり、改革するのではなく、オプションを加えていくことで、生きやすい人を増やしていきたい、これが僕のやりたいことです。

違いを特別視しないことが、ダイバーシティのある社会につながる

--(参加者からの質問)90ヶ国巡った中でどの国が一番ダイバーシティへの考え方が浸透していたか。 またその国のダイバーシティの中心となっている要素についてお聞かせください。

僕が車椅子ユーザーとしてその街を歩いていて楽だったのは、北欧です。それは物理的ではなく、人の視線なんです。北欧が一番何の視線も感じない。僕が健常者であるかのように何の視線も受けないので、とても楽でした。 違いがあることを特別視しないこと、これが根付いていると、誰からもジロジロ見られることもなく生きていけるんだなあと、北欧で感じました。

また、そのような文化の浸透に必要なのは環境づくりにあると思っています。

最近は昔ほどではないですが、日本は先進国の中で長らく分離教育と言って、 障害のある子とない子を分けて教育してきた。だからクラスメイトに障害を持った子がいたという経験を持つ方が少ないんです。
そうなると、障害者にどう接したらいいか分からない、手伝うと逆に失礼になるかもしれないから避けよう、となる。なので、教育の過程で、障害のあるなしはもちろん、 LGBTQ の話だったり、文化の違う子供達だったりを混ぜて教育した方が、結果的にダイバーシティのある社会を作ることに繋がると考えています。

まとめ

今まで、ダイバーシティという言葉に対しての理解を持っていたつもりになっていましたが、乙武洋匡さんの話を、直に伺うことで、我々の考えに偏りがあることに気付かされました。

日常生活においても、一面的な物事の見方をするのではなく、表現・解釈の幅を広げ、伝えることが出来るようになれば良いなと思いました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。