人気音楽ユニットの制作やアートワークをはじめ、数々の大手案件に携わってきたデザイナー・アートディレクターの斉藤和義さん。20年以上にわたり、厳しい制作現場の中で妥協を許さず、デザインと向き合い続けてきました。
一度はフリーランスとして独立した斉藤さんですが、約1年の活動を経て、もう一度会社員に戻ることをあえて選択しました。その新しい挑戦の場として選んだのが、FUSIONです。
なぜ再び組織へ戻る決断をしたのか。そして、FUSIONを選んだ理由とは。斉藤さんのこれまでの歩みや価値観とともに、背景を伺いました。
斉藤 和義(さいとう かずよし)
広告制作会社ツープラトン/ジャイアントを経て、adotグループのBrand Studio「KARASU」に入社。グループ再編に伴い統合された株式会社Birdmanにてデザイン部長を務める。その後、約1年間フリーランスとして活動。その後FUSIONにデザイナー・アートディレクターとして入社。
「こなす」だけじゃない。124ページ描く音楽アルバム制作
――まずは、デザインや広告の仕事を志した経緯について教えてください。
小さい頃から絵を描くことが好きで、デザイナーというよりは「イラストレーターになりたい」と思っていました。それで高校卒業後はイラストを含めたデザイン全般について学べる専門学校に進みました。ただ、専門学校で学ぶ中で、自分に合っているのはイラストではなくデザインだと気づいたんです。そこで、卒業後はチラシ制作を中心とした小さな会社にデザイナーとして入社しました。
その当時は広告業界の仕組みをほとんど理解していなかったのですが、会社が広告代理店と仕事をしていたので、広告制作会社があって、広告代理店があって……といった業界の構造を働きながら徐々に知りました。そこで、広告業界に興味が湧き始めましたね。
また、その会社で自分を育ててくれたデザイナーの先輩の方がいたのですが、その方がとても挑戦的な方で。「自分は必ずディレクターに成り上がる」という強い気持ちを持ちながら、どんな小さな仕事でも徹底的にこだわる姿勢を見せてくれたんです。
その背中を見て、自分はこれからどうなりたいんだろうと改めて考えたときに、「もっと大きな広告づくりに挑戦したい」と思うようになりました。
――そこから、大きな広告を手がけるデザイナー・アートディレクターへと成長されるまで、どのような経験を積んでこられたのでしょうか。
いきなり広告制作会社に入社するのはむずかしかったので、まずは編集プロダクションに転職しました。そこでパンフレットや雑誌広告などの制作から経験を積み始め、その後大手広告会社と仕事をする制作会社へ再度転職し、7年ほど働きました。
その会社では、学生の頃から憧れていた当時一番名を馳せていたアートディレクターの方の案件に携わる機会もあり、感慨深かったです。ほかにも著名なアートディレクターの方々と仕事をする場面も多く、よい広告を作るための考え方やスキルを存分に吸収することができました。

第一線の現場に関われる恵まれた環境であった一方で、当時は今より長時間労働が当たり前で、働く環境に関しては厳しい面もありました。若手が深夜まで働くことも珍しくなく、経験が浅いとアイデアを出すまで、またそれを形にするまでに多大な時間がかかります。特に力を注いだ案件では、50時間寝ずにデザイン案を作り続けたことも……。あの頃は、若さがあったからこそ乗り越えられた、今の自分を築くうえで欠かせない修行時代だったと思っています。
ただ、そんな目まぐるしい日々の中でも、クライアントの連絡待ちで手が止まる時間があれば、スキルを磨くために自分でできることを探しました。「このまま、ただ仕事をこなすだけでは成長できない」と考えていたんです。毎日ロゴを一つ作ってクラウドソーシングのロゴコンペに応募するなど、自分に課題を課すようにしていましたね。
こうした積み重ねが土台となり、徐々にデザイナーだけでなく、アートディレクターとしても仕事を任されるようになりました。
――アートディレクターとして、今までで特に印象に残っているお仕事はありますか?
YOASOBIさんの音楽アルバム『THE BOOK 2』のジャケット制作です。
YOASOBIさんはコンポーザーのAyaseさん、ボーカルのikuraさんからなる“小説を音楽にするユニット”として、小説をもとにした楽曲を制作されています。『THE BOOK 2』では、そのコンセプトを体現するように、バインダー型の“本”のような体裁のアルバムのアートディレクション、デザインを手がけました。
ジャケットの歌詞カードは16ページで1曲分の原作小説の抜粋とイラストをセットにしており、そのイラストをすべて自分で描きました。全8曲分、合計124ページのデザインに取り組むという、濃密でやりがいのあるな経験でしたね。
YOASOBIさん、原作小説、MPV、それぞれの良さを活かしながら、アルバムとしてひとつの世界観が完成するように、曲ごとにテイストの異なるイラストを描き分けました。
――124ページ……!制作時間も技量も相当求められるお仕事ですね。
そうですね。しかも、イラストだけでなく各ページの紙の素材選定まで担当させていただいたんです。YOASOBIさんのアルバムは販売部数が非常に多いため、珍しい素材だと必要な量が確保できません。作品の世界観に合わせつつも、生産面も踏まえて一般的に入手しやすいものの中から選ぶ必要がありました。
『THE BOOK 2』のジャケット制作は正解のない中、持てる限りの力を出し切った――まさに、“魂を込めた仕事”になりました。
――さまざまな経験を積まれてきた斉藤さんですが、FUSIONに入社される前は、約1年間フリーランスとして活動されていたとお伺いしました。
はい。子どもが双子だったこともあり、子育てのことを考えると、会社員よりも柔軟に働けるフリーランスのほうが良いのではないかと思ったんです。

会社を退職してフリーランスになったあとも、大手サービスの広告制作にアートディレクターとして携わるなど、さまざまな仕事を経験しました。
ただ、フリーランスとして働く中で「一人で成長し続けるには限界がある」と感じるようになったんです。顔を合わせて情報を共有し合い、互いに高め合える環境が自分には必要だと思いました。
特に近年は、AIの急速な進化で広告業界、デザイン業界の仕組みも大きく変わろうとしています。こうした変化を今後も一人で追い続けるのは難しいと考え、再び会社員として働く道を意識し始めました。
そんな時期に、会社員時代に一緒に仕事をした経験のあるFUSIONの代表の前田から「社員にならないか」と声をかけてもらって。そこで、FUSIONへの入社を考えるようになりました。
実績はもう積んだ。それでも、次の場所にFUSIONを選んだ理由
――FUSIONのどんな部分に魅力を感じ、入社を決められましたか?
一つは、前田の仕事に対する姿勢です。会社総会の資料や社内ツールのような細かなものに対しても、「自分たちをどう見せるか」を問い続けて丁寧に作り込んでいました。
現場と経営のどちらにも向き合い、役割を切り分けずにやりきる姿勢にも感銘を受けました。20年間仕事をする中で多くの経営者を見てきましたが、現場の細かな部分まで理解しながら、経営者として会社全体を導くことは決して容易ではないと感じています。「1ミリたりとも妥協しない」――そんな姿勢を日々の行動で示す前田の存在が、会社への強い信頼につながりました。
二つ目に魅力を感じたのは、FUSIONの価値観です。FUSIONは「広告を作って終わり」とする単発の施策屋でも、制作会社や運用代理店でもありません。クライアントの課題に向き合い、事業全体を見ながら最適な、新たな打ち手を考える。「NEW ANSWER COMPANY」というタグラインを掲げています。
私自身、会社員時代に「見た目が良い広告」を作ることよりも、クライアントの戦略や狙いを理解した上で理由を持って形にし、感覚ではなく言葉で説明できるようにすることを大切にしてきました。そうすることで成果につながりやすくなり、クライアントとの信頼関係もより深く築くことができたんです。
こうした経験があったからこそ、広告を単体の制作物ではなく事業成長の一部として捉え、「正解」ではなく、これまでにない「次の解」を示していくというFUSIONの姿勢に共感し、入社を決めました。
――実際に入社してみて、社内の印象はいかがですか?
代表の前田だけでなく、社員のみなさんが「やりきる姿勢」を持っていると感じます。バイタリティがあり、主体的に動ける方が多いですね。役職にとらわれず協力し合う文化が根づいていて、「これは自分の担当外だからやらない」という姿勢がありません。会社のために力を出し合う一体感があります。

また、FUSIONは2025年8月に、AIを「使う側」ではなく「つくる側」にいるノバセルにグループインしました。新しい技術により積極的に向き合えるようになり、デザイナー・アートディレクターとして、一人では挑めなかった領域にも踏み込める環境だと感じています。
https://note.com/maeta_r/n/nc5c08c3f3b0c
発展途上の今、つくり上げよう。「やり尽くした」あなたへ
ーー最後に、入社を考えている方へメッセージをお願いします。
今のFUSIONはノバセルグループに加わって間もないこともあり、これからシナジーを生み出していける余白が大きいと感じています。経験豊富な人材が続々と集まってきていますが、組織としてはまだ形づくる余地があり、発展途上の部分もあります。だからこそ、その“足りない部分”を仲間とともに0から100以上へと伸ばし、想像を超える価値を生み出していける、非常に面白い段階にあります。
大手エージェンシーとも真っ向から戦い、結果で応えていく。いわば“ジャイアントキリング”を実感できる環境です。FUSION自身が成長していくプロセスを自分たちの手でつくっていけるのは、整いきった組織では得られない醍醐味だと思います。
「やり尽くしてしまった」と感じている方や、新しい挑戦を求めている方にとって、FUSIONはもう一段上を目指せる場になるはずです。
正解がない中、自分で道をつくり、前に進む。その過程を楽しめる方と、ぜひ一緒に働けたらうれしいです。
(取材・執筆=朝川真帆(@lovely_knot162)/撮影=宮澤あみ)