FUSION取締役および、ノバセル代表取締役CEO、ラクスル上級執行役員CROを務める田部正樹。
ラクスルのマーケティング責任者として同社の成長をけん引し、その後、新規事業としてノバセルを立ち上げた田部は、テレビCM、指名検索、AI活用と、時代ごとにマーケティングの新しい形を切り拓いてきました。
そして2025年、FUSIONはノバセルグループ、ラクスルグループにジョインしました。
AIの進化によって、広告のあり方そのものが大きく変わる中、FUSIONはどのような強みを持ち、どこへ進化していくのか。
今回は田部に、グループインの前後で見えた変化と、これからのFUSIONが進化していく方向性や発揮していける価値について話を聞きました。

田部正樹(たべ まさき)
FUSION取締役、ノバセル代表取締役CEO、ラクスル上級執行役員CRO。
大学卒業後、丸井グループに入社。テイクアンドギヴ・ニーズを経て、14年ラクスル入社。営業企画、事業戦略、マーケティングを担当し、事業戦略室長、マーケティング部長などを歴任。16年10月からCMO(最高マーケティング責任者)に就任。ラクスルの成長をけん引したマーケティングノウハウを詰め込んだ新規事業「ノバセル」を立ち上げ、マーケティングの民主化をビジョンに急成長。22年にノバセルを分社化、代表取締役社長に就任。25年8月にラクスルCMOからCRO(最高収益責任者)へ肩書を変更。同年FUSION取締役就任。業界問わず成長を求める企業の経営×マーケティングのアドバイザー。経済産業省主催「始動」講師/メンター。著書に『指名検索マーケティング』(翔泳社)
なぜ今、FUSIONをグループに迎えたのか
――もともとノバセルがFUSIONをグループに迎え入れたきっかけはなんだったのでしょうか?
広告市場全体を見たときに、FUSIONの持つクリエイティブの圧倒的な強みが、ノバセルと相性がいいと思ったからです。
現在、”広告と生活者との接点”はテレビだけではなく、TVer、YouTube、Instagramなど様々なメディアへ広がっています。認知をつくる手段も、購入や問い合わせにつなげる手段も多様化している。さらにAIによって、広告配信や運用の最適化も進んでいます。
そうした中で、最後に差分を生むのはクリエイティブだと思います。誰に、何を、どのように伝えるのか。どんな表現であれば人の心を動かし、成果につながるのか。AIによって作られた「それっぽいもの」ではなく、本当に成果になるものを生み出すクリエイティブの力。これがこれからますます重要になると考えていました。
そんな時に、FUSIONは、若い会社でありながら成長スピードが速く、クリエイティブを重視する企業から選ばれてきた実績もあることから目に留まったんです。以前から知っていた会社でしたが、お客さまからの信頼も厚く、クリエイティブを起点に価値をつくれる会社だと感じました。それがグループに迎え入れた最大の理由です。
クリエイティブ✖️戦略設計で見えてきた新たな可能性
――実際に一緒になってみて、当時期待していたことはどう見えてきましたか。
ノバセルはこれまで、テレビCMをより使いやすく、効果を可視化できるものにしていくことで、「運用型テレビCM」という新しい市場をつくってきました。マーケティング戦略や仕組み化、AI活用にも知見があります。
一方でFUSIONには、認知と獲得の間にある「理解」や「態度変容」をつくるクリエイティブの力がある。そこにノバセルの戦略設計や効果検証、AI活用の知見が掛け合わさることで、FUSIONはさらに大きな価値を提供できるようになると期待していました。
実際に一緒になってみると、その可能性は内部でも市場でも少しずつ見え始めています。内部では、クリエイティブに戦略やデータの視点が重なり、より事業成果に近いところまで価値を届けられる手応えが出てきました。市場の面でも、これまでの広告会社とは違う新しい価値を求めるニーズは確実にあると感じています。
まだ一緒になってから長い時間が経っているわけではありませんが、FUSIONがこれから切り拓いていける市場は確実にあると感じています。

FUSIONが挑む、「認知」と「獲得」をつなぐ新しい広告の形
――FUSIONは、これからどんな広告会社を目指していくのでしょうか。
FUSIONがこれから挑むのは、「認知」と「獲得」を分けずに、事業成長までつなげる広告の形です。
これまでは、認知はマス、獲得はデジタル、という考え方が一般的でした。ですが今は、その境目がどんどん曖昧になっているんです。認知を広げたいけれど、獲得効率も見たい。ブランドをつくりながら、事業成長にもつなげたい。そうしたニーズを持つ企業は増えています。
私たちは、この新しい広告のあり方を「ネクストマス」と捉えています。ネクストマスとは、テレビとデジタル、認知と獲得、ブランドづくりと事業成果を分断せず、企業が選ばれる状態をつくるための広告構造です。
この領域で、FUSIONは大きな可能性を持っていると思います。FUSIONには、生活者が商品やサービスを知ってから、興味を持ち、選ぶ理由を持つまでの間をつくるクリエイティブの力がある。単に目立つ表現をつくるのではなく、理解や態度変容を生み出し、最終的な獲得にもつなげていく力です。

FUSIONが選ばれ続ける会社になるために
――FUSIONがこれからさらに成長していくために、必要なことは何だと思いますか。
FUSIONとノバセルを合わせると、組織としてはおよそ100人規模になっています。売上規模も大きくなってきており、この数年で急成長している会社であることは間違いありません。
ただ、大切なのは規模そのものではありません。これからも成長し続けるためには、お客さまに選ばれ続ける会社である必要があります。
FUSIONでも、他の広告会社でも変わらないと思われてしまったら、選ばれ続けることはできません。つまり、「FUSIONにしかできないこと」をどうつくるかが重要です。
FUSIONは「NEW ANSWER COMPANY」というタグラインを掲げています。ラクスルには「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンがあります。表現は違いますが、根本にある思想は近いと感じています。
今の当たり前を前提にするのではなく、3年後、5年後に広告やマーケティングがどう変わっているのかを考え、そこから逆算して挑戦する。たとえ失敗したとしても、新しい価値をつくろうとする挑戦には意味があります。
FUSIONには、クリエイティブを起点に新しい広告のあり方をつくれる可能性があります。その可能性を本当の強みに変えるために、時間もお金も投じながら、「FUSIONにしかできないこと」を追求していくべきだと思っています。

ただ儲けるのではなく、広告産業の新しいカタチをつくる
――最後に、FUSIONで実現していきたいことを教えてください。
私がFUSIONで実現していきたいのは、単に利益を出すことではありません。もちろん事業として成長することは重要ですが、それだけでは世の中は変わらないと思っています。
これまでノバセルは、運用型テレビCMや指名検索マーケティングなど、広告やマーケティングの新しい考え方を市場に提示してきました。次はFUSIONが、AI×クリエイティブ、そしてネクストマスという領域から、広告産業の新しいカタチをつくっていくフェーズだと思っています。
AIによって運用が効率化される時代だからこそ、人の心を動かすクリエイティブの価値はより高まっていきます。そして、クリエイティブを事業成果につなげるためには、戦略、データ、仕組みが必要です。
FUSIONは、クリエイティブの力を持っている会社です。そこに、ノバセルが培ってきた戦略やデータ、AI活用の知見が加わることで、クリエイティブと事業成果の両方に向き合える会社になれる。
広告を出すことが目的ではなく、企業が選ばれ、事業が成長する状態をつくる。そのための新しい広告構造を、FUSIONから提示していきたいと思っています。
(取材・執筆=朝川真帆(@lovely_knot162)/撮影=山本良奈)